食物繊維

食物繊維の主な効果は、食後の血糖値の急激な上昇の抑制、コレステロールの吸収の抑制、ダイオキシン類の排出、便通の改善など、生活習慣病の予防に対する効果です。

食物繊維の積極的な摂取は、善玉の腸内細菌(ビフィズス菌など)を増やすことで悪玉の腸内細菌(ウエルシュ菌など)を抑え込む効果をもたらします。

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維では、健康に対する効果が異なります。


食物繊維の摂取が大腸がんを抑制するという研究結果があります。ただし、食物繊維の摂取量が多ければ多いほど、大腸がんのリスクがそれに比例して低くなるというわけではないようです。

食物繊維の摂取量が極端に少ない人は大腸がんのリスクが大きくなります。これに対して、食物繊維を適度に摂取している人、及び食物繊維を多く摂取している人の大腸がんのリスクは低くなっています。

また、食物繊維を適度に摂取している人と食物繊維を多く摂取している人を比べた場合は、大腸がんのリスクの度合いに大きな差はなかったようです。


食物繊維のカロリーは0(ゼロ)ではなく、1g当たり0~2kcalだと考えられています。

人の消化器官では食物繊維の多くを消化できません。しかし、大腸内の腸内細菌が食物繊維を発酵させることによって、食物繊維の一部が酪酸やプロピオン酸のような短鎖脂肪酸に変換されてエネルギー源として人の体に吸収されます。


水溶性食物繊維は一般的に「コレステロールの吸収を抑制する」、「ブドウ糖の吸収を穏やかにする」などと言われています。

水溶性食物繊維にはペクチン、グアーガム、グルコマンナン、アガロース、アルギン酸、カラギーナン、イヌリンなどがあります。


ペクチンは一般的に「整腸作用がある」、「コレステロールを低下させる」などと言われています。ペクチンの摂取はコレステロールの低下に対して有効性が示唆されています。

ペクチンは食品添加物としても使用されています。製品の原材料に記載されている「増粘安定剤(増粘多糖類)」がこれに該当します。食品添加物としてのペクチンはサトウダイコン、ヒマワリ、アマダイダイ(オレンジ)、グレープフルーツ、ライム、レモン、リンゴなどから抽出されます。


グアーガムは一般的に「整腸作用がある」、「血糖値の上昇を抑制する」、「コレステロールを下げる」などと言われています。

グアーガムの摂取は、便の量を増やすことによる便通の改善と高コレステロール血症に対して恐らく有効だとされています。また、高トリグリセリド血症と糖尿病に対しての有効性が示唆されています。

グアーガムも食品添加物(増粘剤、安定剤、ゲル化剤)として使用されています。


グルコマンナンは一般的に「便秘を改善する」、「コレステロールの吸収を抑制する」などと言われています。

グルコマンナンの摂取は、肥満成人の血中コレステロール及びトリグリセリドの低下・血糖値の低下・体重の減少、糖尿病患者における血中コレステロールの低下・インスリンや治療薬の使用量の低減に対する有効性が示唆されています。

グルコマンナンは胃の中で水分を吸収して30分で約10倍、6~7時間で約100~200倍に膨らむと言われることから、ダイエット食品の配合成分に使用されることもあります。


アガロースは水溶性食物繊維の一般的な効果と同じですが、アガロースが酸と熱によって分解された時には、アガロオリゴ糖が生成されます。タカラバイオ株式会社によると、このアガロオリゴ糖には皮膚炎抑制作用や発がん予防作用などがあるようです。

アガロースは寒天に多く含まれる成分です。アガロースからアガロオリゴ糖を生成するには、レモン汁を加えた水で長時間、寒天を煮詰めるとよいようです。普通は冷やすと固まりますが、冷やしても固まらない場合はアガロースからアガロオリゴ糖へ変化しています。


アルギン酸はナガコンブやワカメなど、褐藻類に含まれている成分です。海藻由来の食物繊維として、血中コレステロールの低下作用や抗がん作用が期待されています。


カラギーナンは人の胃潰瘍に対しての有効性が示唆されています。

カラギーナンは紅藻類に含まれる成分です。古くからカラギーナンを利用していた、アイルランドのカラギーンという町名に由来しています。

カラギーナンも食品添加物 (増粘剤、安定剤) として、アイスクリームやゼリー、ソーセージなどに対する使用が認められています。


イヌリンは一般的に「血糖値の急激な上昇を防ぐ」、「コレステロールを下げる」などと言われています。また、イヌリンの摂取は、高トリグリセリド血症に対する有効性が示唆されています。

体質によっては、イヌリンを含む食品でアレルギーを引き起こすことがあります。


不溶性食物繊維は一般的に「便のかさを増やす」、「腸内環境を改善する」などと言われています。

不溶性食物繊維にはセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどがあります。


セルロースは植物の細胞壁と繊維の主成分で、ヘミセルロースはセミロースを除く不溶性の多糖類の総称です。また、リグニンは高等植物の木化に関与する成分です。

リグニンは人の消化酵素で消化できないだけでなく、腸内細菌でも発酵・分解されにくい食物繊維です。


食物繊維の1日当たりの所要量(18~69歳の所要量の平均値)。

・男性…19g以上
・女性…17g以上
・男女平均…18g以上


(年齢…男性の所要量/女性の所要量)

・0~5か月…-g/-g
・6~11か月…-g/-g
・1~2歳…-g/-g
・3~5歳…-g/-g
・6~7歳…-g/-g
・8~9歳…-g/-g
・10~11歳…-g/-g
・12~14歳…-g/-g
・15~17歳…-g/-g
・18~29歳…19g以上/17g以上
・30~49歳…19g以上/17g以上
・50~69歳…19g以上/17g以上
・70歳以上…19g以上/17g以上


(妊娠中、授乳中は上記の所要量に下の数値を加える)

・妊娠中…+0g
・授乳中…+0g


食物繊維が多い食品(水溶性と不溶性の総量)の1~100位を掲載。(含有量は100g当たり)

・こんにゃくの精粉…79.9g
・アラゲキクラゲの乾…79.4g
・テングサの角寒天…74.1g
・白木耳の乾…68.7g
・干しわらびの乾…58g
・木耳(きくらげ)の乾…57.4g
・エゴノリの素干し…53.3g
・アラメの蒸し干し…48g
・テングサの素干し…47.3g
・緑茶のせん茶の茶…46.5g
・唐辛子の果実の乾…46.4g
・ヒトエグサの素干し…44.2g
・緑茶の玉露の茶…43.9g
・ひじきの干しひじき…43.3g
・ふのりの素干し…43.1g
・川海苔(カワノリ)の素干し…41.7g
・干ししいたけの乾…41g
・まいたけの乾…40.9g
・刻み昆布…39.1g
・青のりの素干し…38.5g
・緑茶の抹茶…38.5g
・紅茶の茶…38.1g
・カレー粉…36.9g
・なが昆布の素干し…36.8g
・岩のりの素干し…36.4g
・アマノリの焼きのり…36g
・カットわかめ…35.6g
・干しゼンマイの干し若芽の乾…34.8g
・みついし昆布の素干し…34.8g
・がごめ昆布の素干し…34.2g
・ほそめ昆布の素干し…32.9g
・乾燥わかめの素干し…32.7g
・酵母のパン酵母の乾燥…32.6g
・乾燥わかめの板わかめ…31.7g
・りしり昆布の素干し…31.4g
・アマノリのほしのり…31.2g
・かんぴょうの乾…30.1g
・菊の菊のり…29.6g
・あおさの素干し…29.1g
・マツモの素干し…28.5g
・削り昆布…28.2g
・小豆のあんのさらしあん…27.6g
・真昆布の素干し…27.1g
・紅花インゲン(ベニバナインゲン)の全粒の乾…26.7g
・干しずいきの乾…25.8g
・アマノリの味付けのり…25.2g
・えながおに昆布(こんぶ)の素干し…24.9g
・ココアのピュアココア…23.9g
・あさの乾…22.7g
・たけあずきの全粒の乾…21.7g
・ヒヨコ豆の全粒のフライの味付け…21g
・らっきょうのりん茎の生…21g
・濃縮大豆たんぱく…20.9g
・えごまの乾…20.8g
・切り干し大根…20.7g
・グリンピースの揚げ豆…19.6g
・インゲン豆の全粒の乾…19.3g
・ささげの全粒の乾…18.4g
・かやのいり…18.2g
・豌豆の塩豆…17.9g
・ライ豆の全粒の乾…17.9g
・小豆(あずき)の全粒の乾…17.8g
・粒状大豆たんぱく…17.8g
・豌豆(エンドウ)の全粒の乾…17.4g
・大豆の全粒のブラジル産の乾…17.3g
・大豆の全粒の国産の乾…17.1g
・レンズ豆の全粒の乾…17.1g
・きな粉の全粒大豆…16.9g
・芥子(けし)の乾…16.5g
・ヒヨコ豆の全粒の乾…16.3g
・アラゲキクラゲのゆで…16.3g
・大豆の全粒の米国産の乾…15.9g
・大豆の全粒の中国産の乾…15.6g
・大麦の麦こがし…15.5g
・空豆のフライビーンズ…14.9g
・緑豆の全粒の乾…14.6g
・小麦胚芽…14.3g
・ココナッツパウダー…14.1g
・干し柿…14g
・きな粉の脱皮大豆…13.7g
・ライ麦の全粒粉…13.3g
・インゲン豆の全粒のゆで…13.3g
・塩昆布…13.1g
・ごまのむき…13g
・ライ麦のライ麦粉…12.9g
・ごまのいり…12.6g
・棗(ナツメ)の乾…12.5g
・アーモンドのフライの味付け…11.9g
・小豆の全粒のゆで…11.8g
・ヒヨコ豆の全粒のゆで…11.6g
・おからの新製法…11.5g
・小麦の玄穀の輸入の硬質…11.4g
・エシャロットのりん茎の生…11.4g
・小麦の玄穀の輸入の軟質…11.2g
・小麦粉の強力粉の全粒粉…11.2g
・ハスの成熟の乾…11.2g
・いちじくの乾…10.9g
・小麦の玄穀の国産の普通…10.8g
・ごまの乾…10.8g
・ささげの全粒のゆで…10.7g


水溶性食物繊維が多い食品の1~30位を掲載。(含有量は100g当たり)

・こんにゃくの精粉…73.3g
・白木耳の乾…19.3g
・らっきょうのりん茎の生…18.6g
・干しわらびの乾…10g
・エシャロットのりん茎の生…9.1g
・菊の菊のり…8.2g
・かんぴょうの乾…6.8g
・緑茶の抹茶…6.6g
・カレー粉…6.5g
・大麦の七分つき押麦…6.3g
・アーティチョークの花らいのゆで…6.3g
・アラゲキクラゲの乾…6.3g
・アーティチョークの花らいの生…6.1g
・干しゼンマイの干し若芽の乾…6.1g
・大麦の押麦…6g
・大麦の米粒麦…6g
・粒状大豆たんぱく…5.9g
・ココアのピュアココア…5.6g
・唐辛子の果実の乾…5.4g
・大麦の麦こがし…5.2g
・緑茶の玉露の茶…5g
・干しずいきの乾…4.8g
・ライ麦のライ麦粉…4.7g
・紅茶の茶…4.4g
・インゲン豆の豆きんとん…4.3g
・あんずの乾…4.3g
・にんにくのりん茎の生…3.7g
・大麦麺の乾…3.6g
・切り干し大根…3.6g
・プルーンの乾…3.4g


不溶性食物繊維が多い食品の1~30位を掲載。(含有量は100g当たり)

・アラゲキクラゲの乾…73.1g
・木耳(きくらげ)の乾…57.4g
・白木耳の乾…49.4g
・干しわらびの乾…48g
・緑茶のせん茶の茶…43.5g
・唐辛子の果実の乾…41g
・まいたけの乾…39.4g
・緑茶の玉露の茶…38.9g
・干ししいたけの乾…38g
・紅茶の茶…33.7g
・緑茶の抹茶…31.9g
・カレー粉…30.4g
・酵母のパン酵母の乾燥…30.1g
・干しゼンマイの干し若芽の乾…28.7g
・小豆のあんのさらしあん…26.6g
・紅花インゲン(ベニバナインゲン)の全粒の乾…25.5g
・かんぴょうの乾…23.3g
・あさの乾…21.5g
・菊の菊のり…21.4g
・干しずいきの乾…21g
・たけあずきの全粒の乾…20.7g
・ヒヨコ豆の全粒のフライの味付け…19.9g
・濃縮大豆たんぱく…19.5g
・えごまの乾…19.1g
・グリンピースの揚げ豆…18.7g
・ココアのピュアココア…18.3g
・切り干し大根…17.1g
・ささげの全粒の乾…17.1g
・豌豆の塩豆…16.8g
・小豆(あずき)の全粒の乾…16.6g