内臓脂肪と皮下脂肪の違い
内臓脂肪も皮下脂肪も脂肪と言う点では同じですが、両者には解剖学的な違いがあります。肥満と言うと体重ばかりを気にしがちですが、脂肪がどこに付いたかによって病気になりやすいかなりにくいかが大きく違います。
皮下脂肪はその名の通り全身の皮膚のすぐ下に付く脂肪であり、内臓脂肪は内臓に付く脂肪のことです。この両者のうちで、メタボリックシンドロームなど肥満に関連した病気に対して注意が必要になるのが内臓脂肪の方です。
メタボリックシンドロームとは内臓脂肪型肥満を共通の要因として高血糖、脂質異常、高血圧が引き起こされる状態のことを意味します。
脂肪と言えばまっ先に思いつくのがエネルギーを貯蔵する役割ですが、実は内臓脂肪にはそれ以外の役割があります。それは分泌臓器としての機能です。
内臓脂肪の組織からはアディポサイトカインという生理活性物質が分泌されていますが、このアディポサイトカインには善玉と悪玉のものがあります。しかし脂肪の蓄積により脂肪細胞の肥大化が進むと、脂肪細胞の機能異常から悪玉のアディポサイトカインが多く分泌されるようになります。
逆に善玉のアディポサイトカインの分泌量は減ります。例えば善玉のアディポサイトカインには抗動脈硬化作用を持つアディポネクチンがありますが、脂肪細胞の肥大化が進むことによりこれの分泌量が低下します。
以上のように内臓脂肪が過剰に蓄積されていくと内臓脂肪の組織から分泌される生理活性物質の善玉と悪玉のバランスが崩れるため、メタボリックシンドロームを誘発するわけです。
日本人は内臓脂肪が溜まりやすい人種なので、メタボリックシンドロームに対する注意が特に必要です。欧米人の方が過剰な肥満者が多い印象がありますが、しかし欧米人は日本人ほど内臓脂肪が付きやすくはない人種です。
そのため、欧米人よりも低レベルの肥満であっても、日本人の方がメタボリックシンドロームになりやすいのです。
さらに日本人は欧米人よりも倹約遺伝子(エネルギー消費を節約する働きを持つ遺伝子)を持つ割合が2、3倍高いこともわかっています。過食や運動不足があれば日本人は欧米人よりも簡単に内臓脂肪が蓄積されてしまうのです。