肥満と遺伝子には関係がある?

肥満には遺伝子が関係していると言われることがあります。しかし、常識的な考え方で言うと肥満の原因は過剰に摂取したカロリーであり、いくら遺伝子に問題があったとしても摂取カロリーさえ控えていれば太らないだろう、と一般的には思われているはずです。

もしそうなら肥満に関係する遺伝子の異常は食欲抑制に関わる部分であり、そのせいで食べ過ぎが引き起こされて太ってしまう、というのが常識的な解釈だと思います。

しかし驚くべきことに、ある種の遺伝子に問題があることで、摂取カロリーも運動量も全く同じなのに問題がない人より太ってしまう可能性があるようです。

この肥満に関わる遺伝子とはMRAP2というものです。このMRAP2が欠損したマウスをエサを自由に食べられる状況下に置いた場合、正常なマウスと比べて生後150日の時点で体重が約二倍(通常のマウスの25gに対して約50g)になったようです。MRAP2が欠損すれば食欲抑制システムが十分に働かなくなり、食欲が増えてしまうようです。

しかし興味深い点は別の部分にあり、MRAP2が欠損したマウスの摂食量を正常なマウスと全く同じになるように調整しても、MRAP2が欠損したマウスの方が太ったという結果です。しかも運動不足でも栄養吸収過剰でもなかったにも関わらずです。

MRAP2が欠損した場合になぜ肥満になるのかの原因を特定するために「食べ過ぎ」「運動不足」「栄養吸収の過剰」「新陳代謝の低下」の4つを想定して詳細に検証しました。しかし、肥満の原因がこれら4つのどれにも該当しませんでした。

MRAP2という遺伝子は人にも同じようにあります。この研究結果からわかることとして、人の場合もMRAP2の遺伝子に異常があれば過食をせず運動不足でもないのに肥満になる可能性があるということです。

実際に調べてみれば、高度肥満者の中にMRAP2の遺伝子に異常がある人がいたようです。人の遺伝子はマウスと異なる部分があるため人の場合もMRAP2の遺伝子の異常が肥満の原因であると確定したわけではありませんが、可能性の1つとして考えられるようです。

肥満の原因が今まで信じられていた摂取カロリーと消費カロリーのバランスによるものだけではないかもしれない、という可能性が示された点で興味深い実験内容だと言えます。